女性にキャリアを考える機会を-マミートラックを脱出する方法-

女性の社会進出を語る上で、避けて通ることができない課題の1つとして「マミートラック」があります。

マミートラックとは、出産を経験した女性が出世コースを外れることです。

育児のために休むことが増える、長時間の勤務ができないなどの理由から、本人の意思とは関係なく、単調な業務に配置転換されるなどして、昇進できずキャリアの道が閉ざされてしまうことがあります。

公益財団法人21世紀職業財団の「子どものいるミレニアル世代夫婦のキャリア意識に関する調査研究(2022年)」(以下、21世紀職業財団の調査)によると、女性の半数以上がマミートラックに陥っていることが報告されています。そのうち、現状に納得していないという人は約2割もいるようです。(https://www.jiwe.or.jp/research-report/2022)

ミレニアル世代と言うと、一般的に1981年から1996年生まれの現在26歳〜41歳を指します。ちょうど働き盛りかつ子育てをしていると思われる世代です。

この世代の人材が望まないマミートラックから脱出し、活躍できるような登用をしていくことは、会社を発展させる上で重要な課題と言えるでしょう。

就業継続と活躍できることには乖離がある

子育て世代が仕事と家庭を両立できるように、働きやすい環境を整えることに尽力している会社は多いと思います。

育休や時短・テレワークなどの法律で定められている制度や推奨されている制度に加えて、出産祝金や社内託児所、ベビーシッターなど独自の制度を導入している会社もあるでしょう。

21世紀職業財団の調査では「産後に育児をしながら就業継続できると感じている人」は多く、これらの制度は効果を発揮していると考えられます。

しかし、その一方で女性管理職や女性役員はまだまだ少なく、自分の描いたキャリアのレールに乗れていないと感じている女性も多いのではないでしょうか。

つまり子育てしながら働き続けることと、子育てしながら会社で活躍できることには乖離があるのです。就業を継続できると感じている女性社員が、思い描いたキャリアを積むことができず、マミートラックに乗ってしまうのにはどんな理由があるのでしょうか。

なぜマミートラックに乗ってしまうのか

21世紀職業財団の調査では、望まないマミートラックに乗った原因として、夫婦間での育児や家事の分担や配偶者の出張やキャリア、実家の手助けの有無など家庭での要因が多く報告されています。

その一方で「妊娠してローテーションから外れてしまった」「やりたい仕事ではない」「仕事の内容が限定されている」「自分の能力よりも難易度の低い仕事だった」など、会社での自身の仕事や役割に対して納得がいっていない声もあります。

就業継続だけでなく、キャリアアップや昇進を望む女性社員がマミートラックから脱出する上で、効果的な会社の働きかけについて考えていきます。

マミートラックを脱出するには個人面談を

何度もなでしこ銘柄に選ばれ、女性の社会推進をリードするカルビー株式会社

2010年にはダイバーシティー委員会が発足し、20%以上の女性管理職や女性役員が活躍しています。

カルビーでは「育児をしながら働き続ける」「育児をしながらも活躍をする」という2ステップでワーキングマザーが活躍できるように取り組んでいるそうです。

具体的には下記のような女性はもちろん社員が長く働き、活躍できる環境が整っています。

  • フレックスタイムやリモートワークなど多様な働き方ができるような制度
  • 社内公募やローテーションなどの経験や仕事の幅を広げるチャンス
  • 希望する仕事にチャレンジする機会

さらに注目したいのが、1on1トレーニングやメンター制度など社員が上司と自身のキャリアについて向き合う機会が多いことです。

カルビーの充実した制度は、まず女性社員本人が自分のキャリアについて考える機会やそれを導く上司や会社の支援によって、うまく機能しているのではないでしょうか。

同じく、個人面談など上司とキャリアについて考える機会を積極的に作り、活躍する女性社員を増やしている会社が、ちばぎん証券株式会社です。

従業員数が約300人の中小企業であるちばぎん証券株式会社は、女性管理者比率20%以上を達成しており、くるみん認定やえるぼし認定をされています。

ちばぎん証券株式会社では、自身のキャリアを認識してもらうために人事部や所属長による全社員との個人面談に加えて、女性社員を対象に人事部の女性社員と面談する機会を設けています。

この面談では、業務内容やスキル、今後の希望、女性ならではの悩みなどを率直に話し、相談できる場を作っているそうです。
(https://positive-ryouritsu.mhlw.go.jp/practice/detail?id=159)

21世紀財団の調査では、マミートラックを脱出できた理由として上司からの働きかけがあった」「上司に要望を伝えた」「部長から期待されていて役割がはっきりされていること」などが挙げられています。

上司との面談を通して自身のキャリアについて考える機会が増えることが、マミートラック脱出のきっかけとなっているようです。

しかしながら、上司との定期的なキャリア面談の『施策が会社にあり、受けたことがある』人は 38.5% にとどまっていると報告されています。

まずは、女性社員が率直に話せるように働きかけを

少子高齢化ということもあり、働ける人材は財産と考えている企業も多いでしょう。

特に女性が活躍できる環境を作り、女性管理者を増やしたいと考えている企業は、在宅勤務や時短勤務などの制度を整えたり、研修やローテーションといった人材育成を行ったりとさまざまな取り組みをされていることと思います。

これらをうまく機能させるためにも、まずは個人面談などを通して、女性社員本人がキャリアを意識する機会を作ってみてはいかがでしょうか。

現場の上司や人事部、女性の先輩社員との面談など方法はいくつかありますが、社員が率直に話せる場を作ることが女性社員が多く活躍できる会社の第一歩になることでしょう。

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【参考】

Nikkei4946.com-きょうのことばセレクション-
https://www.nikkei4946.com/knowledgebank/selection/detail.aspx?value=1561

21世紀職業財団:
https://www.jiwe.or.jp/research-report/2022

カルビー株式会社公式サイト:
https://www.calbee.co.jp
カルビーグループ:「ダイバーシティ推進について」
https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/meeting/kokufuku/k_3/pdf/s2.pdf

女性の活躍・両立支援総合サイト:事例集「ちばぎん証券株式会社」
https://positive-ryouritsu.mhlw.go.jp

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この記事を書いた人

俵谷こころ

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