アルムナイ採用は即戦力を低コストで獲得できる秘策?成功ポイント4選

アルムナイ採用という採用手法についてご存じでしょうか?

もともと海外では普通に行われている手法ですが、近年日本企業でも注目が集まってきています。

メリットも多く、これから人手不足が深刻化していく日本にとって外せない採用手法です。

「効率よく人を採用したい」、「即戦力が必要だけどコストを多くかけられない」、「採用までに期間をかけても良い人材を確保していきたい」

そんな思いをお持ちの人事担当の皆様に、ぜひ今回の記事を読んでいただきたい内容になっています。

1.アルムナイ採用とは?

はじめに「アルムナイとは何か?」注目されている背景と共に説明していきます。

1-1.アルムナイ採用とは出戻りのこと

アルムナイとは「退職者」という意味です。アルムナイ採用とは「退職者を再び採用する手法」のことを意味しています。

簡単に言えば出戻りです。ただ一般的な出戻り社員は、出産や子育て、介護などで退職した人を指すことが多いですが、アルムナイとは自主的に転職したり、独立したりした人のことも含んでいます。

アルムナイ採用制度は転職してから別のキャリアを歩んだ人材を再び採用することで習得したスキルを会社で活かしてもらうのが目的です。

1-2.アルムナイ採用が注目されているワケ

なぜアルムナイ採用が注目を集めているかというと「働き方の変化」が大きく影響しています。

今は企業に入社するときに、一生ここで働いていくという気持ちをもって入社する人のほうが少ない時代です。

転職へのハードルは下がり、求職者の流動化は非常に激しくなっています。

そんな時代になっているからこそ、再度自社に舞い戻ってくることもポジティブに捉えられつつあります。

他社で得た知識や知見を活かして、もう一度会社のために貢献していく人材こそ、アルムナイの強みだと言えるため、こうした採用活動が広がりつつあるのです。

2.アルムナイ採用のメリット

アルムナイ採用には大きく3つのメリットがあります。まさしく今、人事担当者の皆様が悩んでいることを解決できるようなポジティブな内容です。

2-1.即戦力の採用に繋がる

1つ目は即戦力人材の採用ができるという点です。アルムナイはもともと自社で活躍していた人材なので、基礎的な知識や企業理解、思考が備わっています。

「いざ入社してもらったら面接の時と印象が違った」というズレをなくすことができるのです。

さらに退職した後にどんな経歴を積み上げたのかによって、当時より更に力となってくれる可能性もあります。

即戦力のアルムナイは再雇用したあとも社内に新しい風をもたらしてくれたり、新人を引っ張ってくれる存在になるでしょう。

2-2.新しい観点を持っている

2つ目は新しい観点を持っている人材であるという点です。

退職して会社から距離を置くと「中にいながら見ている会社」と、「外から見たときの会社」には少なからず差を感じるはずです。

会社をサービスを提供する側からされる側になったり、転職先と比較することで改めて良い点に気づくことができたり、課題に気が付くことができたりします。

人間の心理的に、在籍中は多少不満があったとしても「自分の選んだ場所だから」と目をつむる部分は多いものです。

「自分のいる場所は正しい」と思うために他の人間に対して自社を大きく見せることや、退職者を下に見るような人もいます。

そういった考え方は盲目的になりがちです。「良い会社か?」ではなく、自分にとっての影響度にフォーカスしてしまい、正しい会社の見方ができなくなってしまいます。

その点は、アルムナイはフラットで社内にはない観点を持っている唯一の存在となるのです。

新しい課題提唱や、既存社員が把握しつつも解決策が浮かばず後回しにしてきた課題に対してアイディアを出してくれる可能性を期待することができます。

2-3.コストがかからない

3つ目は低コストで採用ができるという点です。

基本的には他の求職者と同様に面接などが必要ですが、人材紹介費用や求人広告費用などはかかりません。

即戦力の採用は通常、年収の30〜50%くらいのコストは避けられません。

しかしアルムナイであれば、スカウト方式で採用することができるので余計なコストをかけずに獲得することができます。

 3.アルムナイ採用の注意点

メリットの多いアルムナイ採用制度ですが、注意してほしい点もあります。予め把握しておくことで対策を立てることができるので、きちんと読み込んでおいてください。

3-1.情報管理の徹底

1つ目の注意点は情報漏洩のリスクです。アルムナイ採用では、退職した人と現職の社員が交流をはかる機会が増えます。

そこで入社の決まっていないアルムナイに対して現職社員から情報が流れてしまう危険性があります。

もしも情報漏洩が起きてしまうと会社も損害を被る可能性があるので注意しましょう。

社外機密事項の扱いに十分注意することや、情報管理についての意識付け・制度を見直すきっかけとすると良いかもしれませんね。

3-2.会社の変化について事前に共有する

2つ目の注意点はアルムナイの認識を整えることです。会社は日々変化します。アルムナイが在籍していた時代と、現在の会社は大きく変わっていると伝えることが重要です。

「昔はこうだった」という話はポジティブに働くだけではなく、既存の社員を不快にさせる可能性もあります。

例えば良い側面として、良い取り組みがいつの間にか風化していたことを思い出させたり、昔の社員が苦労と失敗を繰り返して今があるということを実感できたりするきっかけになります。

ただ「昔はこうだったから今もこうしよう」というアドバイスは時に時代錯誤なこともあります。

今と昔は違うことをアルムナイ自身が把握しておくことが重要です。

またどんな状況に変わっていたとしても、既存社員が積み上げてきた時間や苦労については尊重しましょう。

昔と今の制度の違い、社風の違い、業界の違いについては事前に面談の時間をとり、認識を擦り合わせておくことでそういったズレを防ぐことができます。

3-3.採用条件をはっきりさせる

3つ目の注意点は、採用ハードルを事前に定めておくことです。またアルムナイの採用は、欠員の補充ではなく増員募集の際に行うのがおすすめです。

欠員の補充では、採用ハードルが甘くなり本来定めているレベルより低くても採用してしまう場合があります。いくら即戦力とはいえ、誰でも採用してしまっては既存社員の退職ハードルが下がるだけです。

他の企業で身に付けた知識やスキルをフラットに判断するようにしましょう。

アルムナイの採用では、社員の納得を得られるような人事評価を目指すことが重要になります。

3-4.社内の受け入れ体制を整える

4つ目の注意点は社内風土を整えることです。

アルムナイ採用は、人によっては批判的にとらえる人もいます。

「退職した時に仕事を引き受けて大変だったのに今更…。」

「一度辞めた会社に戻ってくるなんて…。」

日本はもともと終身雇用が当たり前の時代もあったので、そんな風に感じる人はまだまだ多く存在しています。

アルムナイ採用が活発で成功している企業は、自社にとって必要なスキルを持つ人はどんな状況であれ有益であるというジョブ型の思考をもった組織づくりができています。

まずは会社としてアルムナイ制度の存在を認知させ、プラスのイメージを持たせられるようにブランディングをしましょう。

4.アルムナイ採用のポイント

アルムナイ採用のポイントは大きく分けて4つです。アルムナイ制度を整えるのは時間がかかります。長期的なプロジェクトとして会社の体制を整えるつもりで取り組んでいきましょう。

4-1.卒業者のネットワークをつなぐ

まずはじめに着手するのは退職者のネットワークをつなぐことです。

専用のSNSを作成して、会社を退職するタイミングで参加してもらいます。専用のSNSに登録し続けてくれている人に対し、アプローチすることが可能になります。また、オープンな情報開示も重要になります。

例えば株式会社リクルートでは「Alumy(アルミー)」というカムバック採用制度を支援するサービスがあります。企業と退職者がつながりを持ち続けるためにネットワークサービスを開発し、一生仲間でいることを目指す取り組みです。

こうしたネットワークを活用し、会社で取り組んでいることや、アルムナイ採用にて入社した人のインタビューなどを具体的にPRしましょう。

会社が成長していることや、求めているスキルなどを発信していくことで、退職後の企業努力や成長・良さをアピールすることができます。

4-2.定期的にイベントを開催する

次に、定期的に退職者向けのイベントを開催することも効果的な方法です。

退職者は様々な業種で活躍しているので、集まることでビジネスチャンスにもつながりやすくなります。

アルムナイ採用につながらない場合でも、ビジネスパートナーとして事業を一緒にやっていくような機会を作ることができれば、意味のある企画となるでしょう。

また企業が主体でイベントを開催することで、アルムナイ制度についての認知活動にもなります。会社の福利厚生の1つとしてアピールしていけるよう、継続的に取り組むことが重要です。

4-3.円満に退職してもらうよう努める

アルムナイ採用は、そもそも円満な退職ができなければ成立しない制度です。

そのため、良い人材を獲得するためには社内環境を整えておく必要があります。

会社として社員の成長を願ったり、応援している組織であるからこそ、もう一度貢献したいという社員が集まってくるのです。

戻りたいと思わせる会社であること、心身共に健康的に働ける環境であることを日頃から意識した組織風土が必要になります。

円満な退職は、企業の口コミサイトでも良い影響をもたらします。企業のリアルな内情を伝えるOpenworkのような口コミサイトは、基本的には退職者が書き込むことが多いです。

円満な退職を行うことができればそうしたサイトでもポジティブな内容を見ることが増えていきます。

結果として企業ブランディングやアルムナイ採用のような多様化した人材の獲得に繋げることができるのです。

4-4.社内向けのアピールブックを作る

社内向けのアピールブックを作るのも良いアイディアです。企業にとって、通常の求職者とアルムナイでは知らせるべき内容やアピールしたいことは全く異なります。

求職者向けのサイトやパンフレットのように、社員全員に向けたアピールブックを作成してみましょう。アピールブックには、とにかく自社の魅力を盛り込んでいきます。

例えば

  • 新しい取り組み
  • 優秀な取り組み
  • 成績の良い社員の表彰
  • 新入社員の紹介
  • 長く続く伝統など…

自社の社員やアルムナイだからこそ伝わる魅力がベストです。

こうしたアピールブックの作成と配布は、アルムナイ採用だけではなくリファラル採用(社内紹介制度)にもプラスに働きます。

作成には時間がかかるかもしれませんが、メリットを多く見込める手法です。

5.まとめ

以上がアルムナイ採用についての解説になります。

人材不足が加速する日本では、若手採用と即戦力採用は大きな課題です。

一度は会社に貢献してくれた人材を再度雇用することについてハードルや考え方を改め、お互いがウィンウィンになるような制度・風土作りに努めることが重要です。

今回の記事を参考にぜひチャレンジしてみてください。

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